概要

質量分析イメージングは基本的には短時間で済み、抗体など高価な試薬などを必要としない技術です。

しかし、そこには質量分析ならではの難しさもあります。今回は質量分析イメージングのメリットとデメリットを、染色など一般的なイメージング技術と比較しながら考えてみたいと思います。


質量分析イメージングのメリット

質量分析イメージングには、何といっても分子そのものがどこに・どれだけあるかを直接可視化できるメリットがあります。

例えば生体分子のイメージング技術の中で一般に広く利用されている免疫組織化学染色と比較してみると、免疫染色では抗体を利用して見たい分子をラベル化しますので、抗体を作成できる分子だけが可視化されます。

さらに標識用抗体は高価である場合が多く、染色には手間と時間を要します(図1左)。

一方質量分析イメージングでは基本的に組織切片上に直接レーザーを照射し、見たい分子をイオン化して検出します。

そのためイオン化さえすればどんな分子も検出することができ、分析時間も短くて済みます(図1右)。特に分子量 1000 以下の低分子化合物は抗体を作るのが難しい場合も多く、質量分析イメージングの力が発揮されやすい領域です。

図1 組織免疫化学染色と質量分析イメージングの原理

もう一つの質質量分析イメージングの大きなメリットは、複数分子の同時分析が可能な点です。

一度の測定である程度広い範囲(分子量 150 から 300 など)の分析も可能なので、その範囲に含まれる分子であれば一度に可視化できる場合があります。一方、抗体は基本的に 1 対 1 の反応なので、見たい分子の数だけ高価な抗体を用意する必要があり、コストを要します。

マウス脳 複数分子 分布 イメージング
図2 マウス脳の複数分子同時イメージングの例

質量分析イメージングのデメリット

同時分析が可能というメリットは同時に難しさも伴います。質量分析では一度に非常に多くの情報が得られますので、見たい分子の情報を正しく解析するには専用のソフトウェアと知識・経験が必要とされます。

また、質量分析では分子をイオン化して検出しますので、イオン化しにくい分子には特別な工夫が必要となります。例えばタンパク質などの非常に大きい分子は消化してから分析する必要がありますし、アミノ酸のように電気的に中性な分子では電荷を持った官能基を誘導体化試薬で導入する必要があります。

表1 に質量分析イメージングと染色法の特徴をまとめました。

表1 質量分析イメージングと染色法の特徴

このように、質量分析イメージングは他のイメージング技術とは異なる特徴を持っていることがわかります。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、質量分析イメージングのメリットとデメリットについて紹介いたしました。弊社では豊富な経験と技術を基に、お客様の目的に合った分析をご提案いたします。分析デザインから解析まで総合的なサービスをご提供いたします.