ストレスと脳内神経伝達物質の動態変化を可視化!マスイメージング分析例紹介
はじめに
今回は私共が受託分析サービスとして展開している神経伝達物質スキャンについて解説いたします。
神経伝達物質とは、神経細胞の末端から放出されて他の神経細胞や筋肉などに作用する化学物質のことです。
大変多くの種類あり、特に脳内の三大神経伝達物質としてセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンがよく知られています。最近ではGABAやグリシンなどのアミノ酸類もよく話題に上ります。
神経伝達物質は大きく興奮性と抑制性に分類されます。前述のノルアドレナリンやドーパミンは興奮性、セロトニン、GABA、グリシンは抑制性です(図1)。
神経伝達物質と疾患
神経伝達物質はパーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病などの脳神経系疾患で変化することが知られています。
例えばパーキンソン病では脳内のドーパミンの分泌が減少しすることで種々の症状が引き起こされます。また、うつ病の原因はセロトニンの欠乏とする説(モノアミン仮説)が以前から提唱されています。
神経伝達物質とストレス
これらのような疾患だけではなく、ストレスでも脳内神経伝達物質が変化することが最近分かってきました。
日常生活での過度の緊張や不安などのストレスを脳が感知すると、脳はストレスから身体を守るため興奮状態を保とうとします。そのために抑制性であるセロトニンを生産する神経細胞の働きが抑えられ、脳内のセロトニン濃度が減少してきます。
セロトニンは精神の安定や平常心を保つために重要な神経伝達物質なので、低下するとイライラする、意欲が低下する、気分が落ち込むなどの症状があらわれてきます。
ストレスホルモンと神経伝達物質
ストレスと神経伝達物質の関係にとって、もう一つ重要な代謝物がコルチゾール、別名ストレスホルモンです。
脳がストレス状態を感知すると、副腎皮質からはコルチゾールというホルモンが分泌され、慢性的に分泌が増えてきます。
コルチゾールはそもそも体が活動を行うためのエネルギーを生産するのに非常に重要なホルモンで、副腎皮質と脳の間の調節機構によって量を精密にコントロールされています。
しかし、ストレスによって常に分泌が多い状態が続くとこの調節がうまくいかなくなり、様々な身体症状が起こってしまいます。脳にも機能障害が起こり、神経伝達物質もこの機能障害に関与することが報告されています。
質量分析イメージングと神経伝達物質
このようにストレスと密接な関係のある脳内伝達物質を研究するうえで、質量分析イメージングは大いに力を発揮します。
質量分析イメージングでは動物組織をすりつぶさず薄く切った切片の状態で分析しますので、脳内のどこに、どれだけ、どんな神経伝達物質があるかを可視化することができます。
例えば図2の分析例ではマウスの脳内のGABAとドーパミンの分布が一目でわかります。このような分析から、ストレスによって脳のどの部分で神経伝達物質が増減していくか動態変化を捉えることができます。
まとめ
脳内神経伝達物質は様々な種類があり、化合物の特徴によって分析方法も多岐にわたります。
そのままでは分析が難しい化合物も多いため誘導体化など工夫が必要な場合も多々あります。弊社では豊富な知識と経験から、お客様の要望に最適な分析方法をご提案することが可能です。ご興味のある方は是非下記へお問合せ下さい。