質量分析イメージングの切片作製について~どんなサンプルから切片は作製できる?~
目次
質量分析イメージングは切片上でダイレクトに質量分析を行い、生体由来分子や投与薬剤などを直接検出する方法です。
そのため、
1.ターゲット分子のイオン化
2.分析したいサンプルからの切片作製
が、質量イメージングを実施する上で必須条件となります。
今回は「切片作製」の最初のコラムとして、切片作製が可能なサンプルについて説明していきます。
質量分析イメージングのサンプルとしてよく用いられているのは、
1.動物組織
2.ヒト組織
3.3次元モデル組織(オルガノイドなど)
4.植物
5.食品
などです。
固定液や包埋剤によるイオン化阻害の影響や、ターゲット分子の組織からの流出を考慮し、基本的には未包埋、未固定のサンプルを用いるため、サンプルによっては切片作製が困難なものもあります。
例えば、下記のサンプルは形状が維持しにくく、良好な切片の作製が困難です。
1.骨組織
2.乾燥種子
3.脂肪を多く含むサンプル
4.硬さが均一でないサンプル
このような組織では、粘着フィルム(Cryofilm)が使用されます。
質量イメージングは切片上の特定の化合物(薬剤、脂質、代謝物など)の分布を画像として表示するため、良好な切片の作製がきれいなイメージング画像を得るポイントの1つです。
ミルイオンでは、良好な切片作製が困難とされるサンプルにおいても、サンプルに合わせた切片作製方法を検討し、イメージング分析を行っております。
弊社ではお客様のご要望に応じた様々な受託分析プランをご用意しております。是非お気軽にご相談くださいませ。

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