食品研究にも!脂肪酸分布可視化に関するMSイメージング分析事例紹介
はじめに
MSイメージング(MassSpectrometry Imaging:MSI)は、ターゲットとなる分子(代謝物、投与薬剤など)が、生体内組織のどこに、どのくらい存在するのかを可視化する方法の1つです。
近年の健康ブームにより、共役リノール酸やオメガ3脂肪酸などの脂肪酸が話題になり、肉や魚、ナッツ類などに含まれる脂肪酸は、健康や食品の官能性・品質評価の指標として使用されています。
食品と脂肪酸
「脂肪(を構成する脂肪酸)」=「悪いもの」と思われがちですが、私達に不可欠な必須脂肪酸(αリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸など)があり、これらの脂肪酸は、動脈硬化を防ぐ効果や血圧を下げる作用などが知られています。
また、脂肪酸は、
1) 機能性成分(抗がん活性、免疫調節など)
2) 食品の美味しさに関わる成分
3) 食品の官能性(食感)・品質評価の指標
としても研究されています。
MSイメージングを用いた脂肪酸分布例:弊社「遊離脂肪酸スキャン」
食品研究におけるMSイメージングを用いた脂肪酸分布分析例
1)種もみのオレイン酸を含むphosphatidylcholines(PC) のイメージング
(https://doi.org/10.3390/foods9050575)
白米と玄米のパルミチン酸やオレイン酸を含むPCを比べ、栄養価を比較。
食品中の代謝物および栄養素の分布示した例。
2) オメガ3脂肪酸を含む食用油を給餌したマウス大腸内脂肪酸のイメージング
(http://www.nature.com/articles/srep09750)
2ヵ月間オメガ3脂肪酸を含む大豆油または亜麻仁油を給餌したマウス大腸の凍結切片からパルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸をイメージング。
機能性食品の体内動態や代謝を可視化した例。
3) 赤鯛における多価不飽和脂肪酸のイメージング
(https://doi.org/10.1021/acs.jafc.9b03205)
養殖と天然の赤鯛におけるDHAやEPAを含む多価不飽和脂肪酸を比較。
機能性成分(動脈硬化や血栓症の予防)として脂肪酸を比較した例。
まとめ
脂肪酸は私たちの健康だけでなく、食品の安全性や食生活の質にも関わっています。遊離脂肪酸や脂質を構成する脂肪酸がどこに存在し、環境・時間・調理法によってどのように変化するのか、質量イメージングで見てみませんか?