質量分析イメージング(MSI)で何が分かる? ~食品、食物への分析例のご紹介~
目次
はじめに
今回は質量分析イメージングを用いた食品、植物の分析例をご紹介いたします。
質量分析イメージング(MSI)では、まず組織の極薄切片を切り出し、スライドガラス上に貼り付けた後に、マトリックスと呼ばれるイオン化剤を塗布し 、サンプルを調製します。次に、サンプルを質量分析装置に導入後、一定の区切られた領域ごとにレーザー光を当て、その領域のマススペクトル(MS)取得を繰り返すことで切片中の指定したエリア全体のMS情報を得ます。
そして最後に、それらのMS情報を分子イオンピークごとに解析することにより、ターゲットとする化合物の分布が得られます。
顕微質量分析イメージングによる乾燥ターメリックにおけるクルクミン類の分布の可視化
新間秀一 et al., J. Agric. FoodChem. 2019, 67, 34, 9652
植物体に含まれる二次代謝物はスパイスや生薬に代表されるように多くの有用物質として知られるものが多いです。そこで、スパイスである乾燥ターメリック中のクルクミン類の空間分布を可視化しました。
質量分析イメージングによる米麹中のリン脂質およびグルコースの可視化
新間秀一 et al., 島津製作所 Application Note No.64
酒の品質の良し悪しの判断は杜氏の経験によるところが大きく、科学的な知見が十分に得られているとは言えません。そこで酒造りに重要な米麹中のリン脂質およびグルコースの可視化を行いました。
今回のMSIより、製麹過程でのリン脂質の変化、また破精込みとグルコース分布の相関を確認することができました。
まとめ
質量分析イメージングは今回ご紹介した分析例だけでなく様々な場面で用いられております。
弊社ではお客様のご要望に応じた様々な受託分析プランをご用意しております。是非お気軽にご相談くださいませ。
関連記事
皮膚や毛髪への目的成分の浸透は、化粧品やヘアケア製品の機能の証明となります。今回は質量分析イメージングを用いた化粧品、ヘアケア製品等の開発における分析例をご紹介いたします。
今回は食品等の評価に活用できる質量分析イメージングを用いた脂肪酸のイメージング例をご紹介いたします。
質量分析イメージングは切片上でダイレクトに質量分析を行い、生体由来分子や投与薬剤などを直接検出する方法です。
今回はどのような試料が切片作成できるのか紹介いたします。
今回は私共が受託分析サービスとして展開している神経伝達物質スキャンについて解説いたします。神経伝達物質とは、神経細胞の末端から放出されて他の神経細胞や筋肉などに作用する化学物質のことです。大変多くの種類あり、特に脳内の三大神経伝達物質としてセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンがよく知られています。最近ではGABAやグリシンなどのアミノ酸類もよく話題に上ります。