今回は質量分析イメージングを行う上で重要なマトリックス(イオン化補助剤)の役割を解説します。

マトリックス支援レーザー遊離イオン化(MALDI)法では、イオン化のためのマトリックスの選択が最も重要になります。

MALDI法を使ったMSイメージングでは、シナピン酸(SA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(CHCA)、9-アミノアクリジン(9-AA)などがよく利用されます。(その他のマトリックスに関しては、島津製作所HPを参照のことMALDIPresentation (shimadzu.co.jp))

まず下記写真の通り、試料表面に対して、マトリックスの結晶を薄く均一に、手動(スプレー法)もしくは自動(蒸着法)で塗布します。

そして、マトリックスと試料を混ぜた後、レーザーを照射し、レーザーエネルギー伝達の仲介の役割を果たすマトリックスにより試料分子のイオン化が下記図の通り進みます。

ただし、共結晶の状態に左右されるため、繰り返しになりますが、マトリックスの選択は非常に重要となります。

このとき生じるイオンは主に[M+H]+、[M+Na]+、[M-H]- 等です。サンプルの種類によっては[M+]や[M-H]- も観測されます。また、MALDIで生じるイオンは多くの場合一価ですが、二価イオン([M+2H]2+)が生成される場合もあります。